菓子製造許可取得に必要な設備と改装注意点
自宅でお菓子を製造・販売するには、保健所から「菓子製造許可(※正式には菓子製造業許可のことを指します)」を取得しなければなりません。趣味や家庭内でのお菓子作りとは異なり、不特定多数への提供を目的とするため、厳格な衛生管理基準が設けられています。
許可の取得には、設備面だけでなく、保健所の審査基準を満たすための環境づくりが必要です。自己流の改装は許可が下りない可能性があり、再改装の負担も生じかねません。

こちらでは、菓子製造許可取得に必要な設備と、改装の注意点について、詳しく解説します。
必要な設備と改装のポイント
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居住スペースと製造スペースの分離
リビングとつながったオープンキッチンのような構造では、いくら設備をそろえても許可が下りない可能性が高いです。扉や間仕切りで完全に空間を分けることが基本で、カーテンや可動式パーテーションのような簡易的な仕切りではNGとされることも多いため、注意が必要です。
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手洗い設備
食品を扱う前後に手洗いをするための設備で、調理用のシンクとは明確に分けて設置する必要があります。
コロナ後は、水栓の形もレバー式や足踏み式にする、という条件が増えました。また、シンクの数も家庭とは異なり、1槽ではなく2槽設置する必要があります。感染症や異物混入のリスクを抑えるうえで非常に重要であるため、許可審査でも厳しくチェックされます。
手洗い設備を新設する場合、排水管の位置や床の勾配によって水が逆流したり、隣接する調理シンクとの間隔が狭く、作業動線に支障が出たりするケースもあるため注意が必要です。設置場所を選定する際は、給排水の取り回しを考慮し、実際の作業動線をシミュレーションしながら設計することが大切です。
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冷蔵・冷凍設備
原材料や完成品の保存状態を適切に保つため、温度管理ができる機器が必要です。特に要冷蔵品を扱う場合は、保管温度を保ちつつ清掃がしやすい庫内構造であるかもチェックされます。家庭用冷蔵庫の兼用は避け、製造専用として管理できる体制を整えることが大切です。
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換気設備
調理の際に発生する蒸気やにおいを外に逃がし、湿気によるカビの発生や空気中の異物の拡散を防ぎます。窓を開けるだけでは不十分なため、換気扇や排気ダクトなどの設備が必要です。
ダクトを外壁に通す場合は、家屋の構造や建築基準法に抵触する可能性があるため、専門業者への相談をおすすめします。許可審査では屋内の湿度管理や空気の流れもチェックされるため、厨房内の空気が淀まない設計を心がけましょう。
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床材・壁材の選択
見た目が美しい木製フローリングや壁紙は、水や油に弱く、掃除のしやすさや耐久性に欠けるため、保健所から指摘を受ける可能性があります。床から高さ1メートルまでの壁も、防水素材で覆われていることが必要とされています。
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害虫・ネズミ対策
食品を扱う空間では、害虫・ネズミの侵入は重大なリスクとなるため、徹底した対策が必要です。保健所の現地確認では、こうした対策の有無が許可の可否を分けることもあります。
具体的には、網戸や通気口へのネット設置、扉の隙間を埋めるゴムパッキンなど、細かな対策が重要です。見落としがちな箇所として、建具の隙間には隙間テープやパッキン、通気口には防虫ネットを取り付けるなど、侵入経路をくまなく塞ぎましょう。小さな隙間からでも害虫やネズミが侵入する可能性があるため、念入りな対策を心がけてください。
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器具・食材の保管
完成品と原材料の保管場所を分ける、床に直接置かず棚を使用する、洗浄済みの器具と未洗浄の器具を分けるなど、交差汚染のリスクを避ける管理体制と、お菓子を製造する場所、包装する場所を明確に分けることも求められます。
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衛生管理責任者
製造に関わる人員の衛生管理も重要です。食品衛生責任者の設置が義務付けられており、各都道府県の食品衛生協会で実施される講習を受講すれば取得できます。資格を持つ人が施設の衛生を管理することで、日常的な衛生意識の向上が期待されます。
保健所への事前相談が大切
これらの設備や条件は、自治体によって細かな基準の違いはあるものの、共通して「継続的に安全な食品を製造できる環境が整っているか」を確認するために設けられています。
申請前に不備があると、設備の再調整や追加の改装費用が発生してしまいます。そのため、改装を検討する際は、事前に保健所に相談し、図面や計画内容を確認してもらうことが重要です。
改装作業は、家庭のDIY感覚で済ませられない専門的な部分が多く、特に水回り・換気・電気工事が絡む場合は、建築士や設備工事の専門業者に相談することをおすすめします。
設計図や改装計画を保健所に事前に提出し、担当者の意見を聞きながら進めることで、無駄な費用や再工事のリスクを大幅に減らすことができます。自宅を営業用の製造施設に変えることはハードルの高い取り組みですが、許可取得後の信頼性や安心感は大きな強みです。
改装は一度きりのチャンスだからこそ、費用をかける部分と抑える部分を見極め、許可取得を見据えた堅実な施工計画を立てることが大切です。
自宅で菓子製造許可を取得するためにかかる改装費用は?
許可に必要な設備や改装のポイントを押さえた後、次に気になるのは「いったいいくらかかるのか」という費用の問題です。
自宅の一部を菓子製造スペースとして整える場合、工事の内容や規模によって費用に大きな差があります。
ある程度しっかりとした施工を行う「本格的な改装」になると、費用は50万円~200万円以上かかることもあります。
ただし、自治体によっては小規模事業者向けの創業補助金や改装支援制度が あります。市区町村の創業支援事業や中小企業支援センターなど、補助金や低金利融資制度を案内している場合もありますので、事前に確認しておきましょう。

改装にかかる費用は決して安くはありませんが、必要な基準をクリアすることで安心・安全な製造環境を整えることができ、将来的な信頼獲得や事業継続の土台にもなります。
見積もりを複数の業者から取り、比較検討することも忘れずに行いましょう。
自宅での菓子製造許可取得は、正しい準備が成功の鍵
自宅でお菓子を製造・販売するには、必要な設備の整備から改装、費用の見積もりまで、やるべきことが数多くあります。しかし、一つひとつの要点を押さえ、しっかりと準備を進めれば、許可取得は決して難しいものではありません。
初めての開業で不安な方は、ぜひあかまつ学校にご相談ください。菓子製造許可取得のための設備要件や改装のポイント、保健所とのやり取りなど、開業に必要な知識や手続きを体系的に学べます。
経験豊富な専門家が、皆様の疑問やお悩みに寄り添い、個別の相談にも丁寧に対応いたしますので、安心して開業準備を進めていただけます。スムーズな許可取得をサポートいたしますので、お気軽にこちらよりお問い合わせください。
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